
武生駅から1日に数本しかないバスに乗って1時間。旅ならではの心ときめく時間でもあります。見知らぬ風景を車窓から眺めながら、都会では眺めることのできないその土地ならではの地形、郷土の人々の暮らし振り、車内から聞こえてくる方言、どれもが新鮮でした。道の駅の中に厨温泉が入っています。広々とした温泉で、一面ガラス張り。窓から眺める景色は日本海が一望できます。露天に出ると視界が開かれるす水平線。それまで天気がぐずぐずしていたところ雲の合間から一筋の柔らかな光が差し込み、海に反して水面が美しかったです。太平洋側で育った私は穏やかで静かな海を見てきたのでその違いに圧倒されました。天を打つほど飛沫と共に波が高く上がり、波と波が打ちつける自然の力強と音の大きさに息を呑むほどでした。荒波が岩に打ち付けると物凄い音があちらこちらで聞こえてきます。自然の生み出す天然の音に耳を澄ませ心身が癒されます。お湯は美人の湯と称され泉質はナトリウム塩化物温泉とのこと。骨の髄まで温まり長旅の疲れが取れ夜はぐっすり眠れました。その後今井旅館に泊まり、特大の越前蟹を頂きました。この年、越前蟹の捕獲量が少なく原油高騰と重なり、福井県の中心部では一杯10万の値がつく一般人には手が出ない価格になっていましたが、こちらの旅館では網本のため5万円くらいで贅沢ができました。くりや温泉で眺めた日本海は旅館から一本道路を挟んだ向かいであったため、寝る時にも和室からは大きな波の音が響き渡り、波が引く音、波が打ち付けるとパン、バシャン、という音を耳で追いかけているうちにいつのまにか眠りについていました。朝になり、再びくりや温泉へ向かいました。前日と違い、福井では珍しく晴れ青空が広がると海の色が色濃く見え、一段と温泉からの眺めは格別でした。同じ場所でありながら毎日表情が変わる温泉からの眺めに感動しました。2024年に新幹線が京都、金沢から福井まで開通し通いやすくなったのは歓迎ですが今頃観光客で穴場だった温泉は混んでいるのでしょうか。また機会があれば是非とも伺いたいお気に入りの温泉です。