温泉情報(冬)
冬の温泉情報
火山列島である日本には、各地に源泉があり、特に寒い冬には体と心を癒すために温泉を目指す人が少なくありません。温泉地を選ぶ際には、泉質や温泉設備もさることながら、どんな景色の中で温泉を楽しめるかもポイントになります。ここでは、冬ならではの雪見露天風呂の紹介や、冬の温泉に入るときのコツ、温泉につかるサルの話を紹介します。
意外と近くで楽しめる?雪見露天風呂

温泉の醍醐味と言えば、何と言っても野趣あふれる露天風呂。春夏秋冬の移ろいを感じながら、その季節ごとに露天風呂の楽しみ方は異なりますが、やはり冬には真っ白に積もった雪景色の中でのお湯を楽しみたいものです。
“雪見露天風呂に入ることができる温泉”、と聞くと北国を連想する人は多いでしょうが、実は北海道から九州に至るまでの各地で雪見露天風呂を楽しむことができます。例えば、熊本県南小国町の黒川温泉は阿蘇山の北、大分県との県境近くの山あいにある温泉地で、冬場には積雪もあることから雪見露天風呂が楽しめます。「火の国・熊本」で雪見温泉。一風変わった風情が何とも趣深く、根強いファンもいるのです。
南北に長い日本列島ですが、雪の降る地方であれば雪見温泉は意外と見つかりやすいもの。この冬はぜひ、お近くの雪見露天風呂を探してみませんか?
冬の温泉は入る前のかけ湯が必須!
外は雪。露天風呂へと続く扉を開けると、そこは白銀の雪景色。手前には、もうもうと湯気を上げて露天風呂のお湯が広がっています。いち早く温かいお湯に体をひたし、この絶景の入浴を楽しみたいからと言って、いきなり雪見露天風呂に入るのは、実は大変危険な行為なのです。
寒い冬に入浴するにあたって注意したいのが、いわゆる「ヒートショック」です。雪が積もっている屋外の露天風呂の外気は氷点下もしくは0℃程度で、そこから急に40℃程度の温泉に入ってしまうと、体への衝撃が強く危険です。その予防のために、浴槽に入る前に桶で浴槽のお湯を汲み体にかけることをお勧めします。お湯の熱に体を慣らしておいてから浴槽につかることが重要なのです。このとき、心臓から遠い箇所である足先などの末端部分からお湯をかけていくことがポイント。時間をかけてかけ湯をじっくり行なうことにより、体がお湯の温度に慣れていきます。また同時に、温泉の泉質による体への刺激も徐々に慣れさせることできます。
なお、浴槽の中では知らないうちに大量の汗が体外に排出されますが、体の水分が失われるにつれ血液の濃度が高まり、ヒートショックを起こしやすくなりますので、入浴前にコップ一杯の水を飲んでおくのも良い予防法と言えます。
世界で唯一サルが入る温泉
長野県北東部の山ノ内町は志賀高原で知られる観光地ですが、10の温泉が湧く「湯田中渋(ゆだなかしぶ)温泉郷」は大分県の別府温泉に次いで共同浴場数が多い温泉郷で、湯横川沿いに温泉街が形成されています。
温泉街から湯横川をさかのぼり、温泉郷のもっとも奥地にあるのが、秘湯中の秘湯と呼ばれる「地獄谷温泉」です。一軒宿には、4つの内湯と2つの混浴露天風呂がある他、国の天然記念物に指定されている間欠泉「渋の地獄谷噴泉」を見ることができます。そして何よりの特徴が、この宿の屋根を飛び交うように駆け抜ける野生のニホンザルたちの存在です。冬の朝には、サルたちが露天風呂に入ってくることも少なくありません。世界中で温泉に入って体を温めるサルは、ここでしか見られないため、今では国内外に知られる温泉となっています。
地獄谷温泉のすぐ近くには、彼ら野生のニホンザルの保護と観察を行なう「地獄谷野猿公苑」があり、サル専用の露天風呂にゆっくりとつかるサルたちを見ることができます。
冬休みを利用して、温泉旅行に出かける人も多いのではないでしょうか。年末年始は温泉宿で特別な料理が提供されたり、湯船から初日の出を見られたりと、なかなか味わえない気分を満喫できます。この冬は温泉地でちょっと贅沢をして、新しい年を迎えてみませんか。
新春プランを利用しよう

お正月は自宅や故郷でゆっくりくつろぐ人も多いようですが、温かい温泉に浸かりながら新しい年を迎えるのも格別です。各地の温泉宿では、新年ならではの料理や行事でおもてなしをしてくれる新春プランがあるので、これを利用してお正月を温泉地で迎えてみてはいかがでしょうか。
玄関には門松、ロビーにはおめでたい松竹梅や華やかな季節の花などが飾られ、年賀ムード一色でお出迎えをしてくれます。また、宿泊客に樽酒や甘酒を振る舞まったり、料理はおせち料理など特別メニューが用意されるなど、お正月ならではのプランやサービスを提供しています。海に面した温泉地では、朝風呂に浸かりながら雄大な海から昇る初日の出を鑑賞することもでき、生まれたままの姿で、新年の誓いや目標を描いてみるのも良いでしょう。
このように様々な特典やサービスがある新春プランは、どこの温泉地も人気があるため、早めに計画を立てて予約を取っておくことをオススメします。
温泉で初日の出を鑑賞
海沿いの温泉地では、雄大な海を望めるように設計されている温泉宿も多く、このような温泉宿で、湯船に浸かりながら初日の出を拝むのも格別です。お正月の温泉地では、夜明け前からお風呂に入ることができるため、少し早く起きて日の出の前から湯船に浸かり、初日の出のパワーを全身で受けながら新しい一年を迎えられます。
また、宮城県・松島温泉は、日本三景「松島」を眼下に控えた風光明媚な温泉地で、露天風呂からは素晴らしい景観を望めます。千葉県・犬吠埼温泉は、日本一早く初日の出を見ることができる場所で、大海原から姿を現す太陽に感動を覚えます。伊豆半島南端の下田温泉も初日の出の景勝地で、海を一望するオーシャンビューからは、日の出とともに黄金色に染まった海を堪能できます。大分県別府湾に面する日出温泉や宮崎県フェニックスリゾート温泉では、南国ムードを満喫しながら、初日の出を見ることができ、その雄大な景色には心が洗われるようです。
今年は、初日の出が見える温泉宿でしか体験できない特別な新年を迎えてみてはいかがでしょうか。
「湯疲れ」に注意
冬の温泉は体も心も温めてくれ、ついつい長風呂になったり、何度も入浴したくなりますが、入りすぎると逆に体調を崩す場合があります。これは「湯疲れ」によるもので、のぼせたり立ちくらみがしたり、ひどい場合は浴室内で倒れたりすることもあります。湯疲れの原因のひとつは、高温のお湯に長く浸かった場合などです。適正な湯温は38~40℃くらいですが、それ以上の湯温では心拍数や血圧が上昇し、心臓などの循環器に負担がかかります。特に心臓疾患などがある人は、高温の湯船に浸かるのは避けたほうが良いでしょう。また、食事直後や運動直後の入浴も湯疲れしやすいと言われています。入浴は意外と体力を消耗するので、疲れた体で長く入浴するのは余計に体力を奪うことになります。
このような湯疲れを予防するには、入浴中に汗をかくと血液の粘度が高まり、「ドロドロ血」になります。この「ドロドロ血」の状態で入浴すると、血圧の急上昇により血管は詰まったり破れたりしやすくなるため、入浴前にコップ一杯程度の水を飲みましょう。また、十分にかけ湯をして体をお湯に慣らし、湯船に浸かるときは、ゆっくり入り、半身浴から全身浴へと段階を踏んで、急激に体温が上昇しないようにします。また、湯治として3日~1週間、毎日温泉浴を繰り返すと、数日後に体のだるさや食欲不振などの症状が現れることもあります。これは「湯あたり」の症状で、泉質が体に合わない場合に起こる現象です。硫黄泉や放射能泉など刺激の強い泉質に多く、体調が悪くなったら入浴を控えるようにしましょう。
寒い冬に温かい温泉につかれば、それだけで気分は最高。疲れた体と心が癒されます。雪を見ながら入る温泉、お正月に入る温泉など、冬ならではの過ごし方もいろいろあります。体をポカポカにする泉質も紹介しますので、この冬は温泉でのんびりと過ごしましょう。
温泉で雪見酒

冬の寒さには、温泉につかってゆっくり過ごすのが一番。体も芯から温まり、湯煙と周囲の景色が心を和ませてくれます。積雪地帯の温泉地であれば、降り積もった雪を眺めながら入浴を満喫できます。しかも、温泉に入りながらお酒も味わえるサービスを実施している宿泊施設もあります。温泉に入って雪見酒を楽しむと言うのは、普段ではなかなか味わえない風情あるひとときです。湯船に徳利と盃を載せたお盆を浮かべて、雪景色を堪能しながら飲むお酒は格別なものがあります。お酒を飲む人なら一度はやってみたいことでしょう。サービス内容は宿泊施設によって異なりますが、主に貸切露天風呂がある宿泊施設で実施しています。ただし、お風呂から注文ができなかったり、入浴時間や酒量を決めていたりと、入浴客の安全を考えた取り決めが設定してあります。入浴によって血行が良くなる程お酒も回りやすく、大量の飲酒は危険を伴います。自分の適量を知った上で、楽しく飲みましょう。
温泉で迎えるお正月

お正月を故郷で迎えたり、海外で迎えたりと多様化する中、温泉で迎えるのはいかがでしょうか。通常料金より若干高めになりますが、1年間頑張った身体を温泉に浸かって癒し、友達や家族と一緒に労をねぎらいます。温かい湯船につかりながら、体も心も解放させれば、新しい年への活力もみなぎってくることでしょう。
宿泊施設によって様々なお正月プランを用意しており、いつもと違う新年を迎えることができます。大晦日の夜には年越しそばが振る舞われたり、元日の料理にはおせち料理が出たりと、グルメにとっては豪華な料理が堪能できます。また、海沿いの旅館やホテルなどでは、お風呂に入りながら初日の出を拝んだり、温泉街の神社に初詣に行くこともできます。温泉街では元日から店を開けているとこもあり、お正月の縁起物を買うことができます。
さらに、主婦にとっては、お正月に家事を一切行なわなくても良いのが嬉しいことです。家にいるとお雑煮を作ったり、お酒の準備をしたり、挨拶回りの来客があれば接待するなど、お正月と言えどもなかなか落ち着ける時間がありません。しかし、温泉で迎えることで、こうした煩わしい家事から解放され、伸び伸びとお正月を過ごすことができます。
体をポカポカにする泉質

冬に入る温泉は体が温まり、心身ともにリフレッシュできます。しかし、同じ温泉でも泉質によって暖かさが持続するものとそうでないものがあります。体を芯からポカポカ温めてくれる泉質は、塩化物泉、硫黄泉、含鉄泉です。
塩化物泉は、ナトリウムが多く含まれ、これが皮脂やタンパク質と結びついて皮膚の表面に膜を作ります。そのため肌から水分や熱の放出を抑えてくれるので、体がポカポカした状態が持続し、湯冷めもしにくいのが特徴です。また、発汗を促しエネルギー消費も高いので、ダイエット効果が見込めます。
硫黄泉は、硫黄型と硫黄泉硫化水素型の2種類があり、硫黄泉硫化水素型は、毛細血管を拡張してくれる作用があるので、指や足の先まで血行が良くなり、体内の老廃物の排出機能も高まるので、代謝の促進に効果的です。ただし、独特な臭いがあることと肌への刺激が強いので、肌が弱い人は入浴後に成分をシャワーなどで洗い落とすようにします。また、硫黄分が金属を変色させるので、アクセサリーははずして入りましょう。
含鉄泉は、鉄分が多く含まれた温泉で、お湯も褐色や茶褐色の濁った色をしています。鉄分は熱伝導率が高いので、高い温熱効果をもたらします。そのため、お風呂上がりもポカポカした状態が続きます。
冷え性などで体を芯から温めたい人には、これらの泉質の温泉がおすすめです。